企業の透明性は消費者のカスタマージャーニーに力を与えるという事例

ニューヨークタイムス紙に打ったパタゴニアの全面広告
ニューヨークタイムス紙に打ったパタゴニアの全面広告

カスタマージャーニーという行動分析メッソドがある。

 

企業と消費者の関係を「購買への旅を続けるカスタマー」に例え、行動予測をあらかじめ考え、集客からアクションに導く分析手法だ。これは企業が消費者にアクションを促すための一方向からの視点を考えるメッソド。

 

このカスタマージャーニーをもう少し俯瞰的に捉えると複数の視点を捉えるヒーローズジャーニーになる。カスタマージャニーではターゲットが単純だがヒローズジャニーでは複数の出演者のタイムラインを扱える。

映画に例えるとスター・ウォーズがわかりやすい。消費者をルーク スカイウオーカー。企業が提供するサービスやプロダクトが、旅のパートナーC3POでありライトセーバーだ。そして両者が向かう消費行動が経済という王国だ。

 

消費者というヒーロが現状の王国の不完全さを認めながらも、共に理想を追いかける企業の姿は消費者の信頼とWin&Winを得ることに繋がる。

 

ヒーローズジャーニーと、企業のミッションの関係について。

とは言うものの実のところ、ヒーローの人生のパートナーである企業は自身の失敗や至らなさというものはなかなか見せたくはないものである。出来れば不都合なことは隠しておき、時間を経ることで通りすぎて欲しいと思っているはずだ。しかしこれでは経済という王国にも影響が出てくる。これは目先のブランド維持に大半のマネージメントコストをかけて、実は大元の自社のミッション維持の手を抜くからだ。大手企業の偽装、偽証報告など一連の最近の問題がそうだ。ブランド価値を上げるためにブランド価値を下げるという皮肉な結果を招いた。

 

このように消費者は日常に潜む旅のパートナーであるライトセーバーとしての頼りになる企業のプロダクトが実際は何か問題を抱えているか知りたがるものだ。ライトセーバーが作動しなければ一大事だ。

 

良い意味で参考になる事例がある。「旅のパートナーの心底からの願い」がマスメディアを使い広がった。

2011年、老舗アウトドアブランドのパタゴニアは自社の不都合な現状を大手新聞ニューヨークタイムスに新聞広告を打った。

「Don't Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」

 

このキャンペーンではブラックフライデー※と呼ばれる、売り上げの上がる時期に敢えて「ジャケットを買うな」というメッセージを発したのだ。これは過剰消費をする消費者に対して「購買をする前に本当に必要かどうか良く考えて欲しい。」というメッセージ。

 ※アメリカ合衆国の11月第4木曜日の感謝祭の翌日の金曜日のこと。感謝祭明けにスタートするクリスマスのセールにより、小売店が黒字になることから、こう呼ばれる。

 

より良い環境を維持していくためには、多くの人々が消費をおさえる必要があり、さらにビジネスとして製造を削減し、より高品質なものを生み出していく意志だ。 

消費礼賛の現代において、下記にあるように環境問題と向き合い消費者に対して敢えて「買い物をする際は熟考するように」とメッセージを投げた。これによって持続可能な地球を真剣に考えている企業としてカスタマーは旅のパートナー、パタゴニアを正直者だと評価し信頼感を抱いたのではないだろうか。以下は、その広告のボディコピーと訳文だ。

 

■訳文

リデュース(削減):私たちは長持ちする有益な製品を製造し、お客様は必要のないものは購入しません

リペア(修理):私たちはお手持ちのパタゴニア製品の修理をお手伝いし、お客様は破損した製品は修理することを誓います。

リユース(再利用):私たちは不要となったパタゴニア製品の再利用先を探す手助けをし、お客様はそれを必要としている人に売るか、譲ります。

リサイクル(再生):私たちは使い古されたパタゴニア製品を回収し、お客様はパタゴニア製品を埋め立て地や焼却炉に入れないようにすることを誓います。

リイマジン(再考):私たちとお客様はともに自然に戻せる分だけを利用する世界を再考します。

※翻訳ソフトにて和訳


Reduce 

We make useful gear that lasts a long time 

YOu don’t buy what you don’t need

 

Repair 

We help you repair your Patagonia gear 

YOu pledge to fix what’s broken

 

Reuse 

We help find a home for Patagonia gear 

you no longer need 

You sell or pass it on*

 

Recycle 

We will take back your Patagonia gear 

that is worn out 

You pledge to keep your stuff out of 

the landfill and incinerator

 

Reimagine 

Together  we reimagine a world where we take 

only what nature can replace

 


まさにパタゴニアの環境問題への取り組みは、われらヒーローの総和としての地球人にに向けたパートナーからのメッセージである。地球を守るには私達の大きな代償も必要と伝わって来るが。そこでもう少し詳しく調べてみると。

 

パタゴニアといえば、米国内でビジネスがもたらす環境危機にいち早く警鐘を鳴らした草分け的な存在だ。

長年にわたってみずから環境や社会に対する責任に取り組み続けてきた。

その企業理念は「レスポンシブル・カンパニー:責任ある企業」を唱え、「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」。

 その背景には人間が資源を使いたいだけ使い、自然を汚染し、地球環境に負担をかけながら拡大してきた我々のビジネスも、このままでは早晩立ちゆかなくなる。ビジネスに関わる人びとは、環境に負荷をかけるやり方を変えなくてはいけない。なんとも不都合な状況を含むが共感できうるメッセージだ。

 

数々の困難が待っているが、その信念をパタゴニアは貫いている。

 1990年代に入るとパタゴニアは、すべてのコットン製品の原料を、工業的に栽培された従来のコットンからオーガニックコットン(農薬・肥料の厳格な基準を守って育てられた綿花)へと切り替えたり、リサイクル・ポリエステルからつくったフリースや、古紙100%のカタログ用紙を他社に先駆けて使うなど、環境負荷の低減に徹底して取り組みはじめた。そして、「自社をモデルとして他社に環境保護の模範を示したい」ということを、明確に自覚し自分が計算してリスクをとり、できれば他社もつづいて来てくれる事を願っている。

 

環境負荷にフォーカスすると実は企業には、苦情がインターネットを介して広がってしまいかねなくエネルギー、水処理、廃棄物処理などのコストが上がりつづけるリスクに誰もが知り得てしまう。 この事を評判リスクという。

 

しかしパタゴニアにとって不都合だが透明性のあるメッセージはカスタマーと共に信念に基づいた旅の途中を共有させ安心できる。

不都合ではあるが事実と実態の透明感のあるパートナーからのメッセージはカスタマーに旅の安心と保証を促す。そのようなエピソードはブランドのあらゆるコミニケーションを通じて語られるドキュメンタリーの基礎になる。

 

そして企業が真実を実践するという旅の心強さと一緒に王国に辿り着くまでカスタマーは真剣に目をひからせ、良い相棒だと信じたがっている。


 ■和訳

 今日はブラックフライデーです。ブラックフライデーは、オンラインショッピングにメディアや市民の関心を惹くために全米小売協会(NRF)が造ったものです。消費文化を反映するブラックフライデーは、私たちの生活を支えている自然環境に損失を与えるのです。私たちは唯一無二の地球で、地球1個と半分の資源を浪費しているのです。パタゴニアはいつまでも事業を継続させたいと思っており、そして私たちの子供たちにも生存可能な地球環境を残したいと思っています。だからこそ私たちは、他の企業が現在行っているやり方とは反対のことをしたいと思います。皆さんにお願いがあります。このジャケットや他の商品にお金を費やす前に、買い物を少しでも減らして欲しいのです。
 企業が倒産するのと同様に環境破壊は、極めてゆっくり進行し、そしてある日突然起こります。私たちが消費ペースを落とし損害進行を反転しなければ、私たちは環境破壊に直面することになるのです。すでに淡水や表土、魚介類や湿地帯が枯渇しつつあります。これらは地球の自然生態系であり、私たちの生活や事業の資源となっているものです。
 私たちが生産するものすべての環境コストを計算すると、驚くべきことがわかります。当社のベストセラーであるR2ジャケットをみてみましょう。このジャケット1枚作るために135リットルの水を必要とします。これは人が1日に必要とする水(1日コップ3杯)の45人分に相当します。この素材の60%がリサイクルされたポリエステルですが、原料から製品となりリノにある倉庫に運ばれるまで、およそ20ポンド(約9キログラム)の二酸化炭素が排出されるのです。これはこのジャケットの重さの24倍にもなります。そして、このジャケットがリノに到着するまでに、この重さの3分の2の重量の廃棄物が後に残されるのです。
 60%リサイクルポリエステルで作られたジャケットは高い品質基準の下、製編し縫製されています。耐久性が非常に高いため、頻繁に買い替える必要はありません。そして、耐用年数後には引き取って同じ価値の製品にリサイクルします。ただ、私たちが生産し、お客様が買うものすべてに言えることなのですが、このジャケットを作るのにかかる環境コストは商品価格よりも高いのです。私たち全員が行わなければならないことは沢山あります。必要でないものを買うのはやめましょう。何か買う前に再考してください。そしてパタゴニア共通テーマ・コムのサイトにアクセスし、共通テーマ・イニシアチブに誓約してください。5番目のRにあるように、自然と交換できる分だけの消費ですむ世界をリ・イマジンしてください。

 

■英文

It’s Black Friday, the day in the year retail turns from red to black and starts to make real money. 

But Black Friday, and the culture of consumption it reflects, puts the economy of natural systems that support all life firmly in the red. We’re now using the resources of one-and-a-half planets on our one and only planet. 

Because Patagonia wants to be in business for a good long time – and leave a world inhabitable for our kids – we want to do the opposite of every other business today. We ask you to buy less and to reflect before you spend a dime on this jacket or anything else. 

 

Environmental bankruptcy ,as with corporate bankruptcy, can happen very slowly, then all of a sudden.This is what we face unless we slow down, then reverse the damage.We’re running short on fresh water, topsoil, fisheries, wetlands - all our planets natural systems and resources that support business, and life, including our own. 

 

The environmental cost of everything we make is astonishing. Consider the R2® Jacket shown, one of our best sellers.

To make it required 135 liters of water, enough to meet the daily needs (three glasses a day) of 45 people. Its journey from its origin as 60% recycled polyester to our Reno warehouse generated nearly 20 pounds of carbon dioxide, 24 times the weight of the finished product. This jacket left behind, on its way to Reno, two-thirds its weight in waste.

 

And this is a 60% recycled polyester jacket, knit and sewn to a high standard; it is exceptionally durable, so you won’t have to replace it as often. And when it comes to the end of its useful life we’ll take it back to recycle into a product of equal value. But, as is true of all the things we can make and you can buy, this jacket comes with an environmental cost higher than its price. 

 

There is much to be done and plenty for us all to do. Don’t buy what you don’t need. Think twice before you buy anything. Go to patagonia.com/CommonThreads or scan the QR code below. Take the Common Threads Initiative 

pledge, and join us in the fifth “R,” to reimagine a world where we take only what nature can replace.

 

common threads initiative